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インスタントでも意外に役立つ! 誰でも出来るWEBユーザビリティテスト

皆さんは「ユーザビリティテスト」をご存知でしょうか?
読んで字の如く「使い勝手の(良し悪しを知るための)テスト」です。

 

WEBの世界で言えば、WEB上のあらゆるサイトや製品やサービスを対象に、ユーザーがそれを使う際に、迷ったりつまずいたりせずに目的を果たせるか。また、その最中あるいは使い終わった際に、対象物に対して抱いている感情が、心地良さや快適さや楽しさなどポジティブなものであるかなどを知るために行います。

 

ユーザビリティテストをきちんと行おうと思うと、専門知識のあるユーザビリティエンジニア、被験者の様子を観察・記録する専用の施設、どんな目的でどのように行うかといった周到な打合せ、被験者集め、テストの実施、結果の分析など、膨大な準備と時間とそれに釣り合う高額な費用が必要となります。
作ってしまったら形が変えられない製品ならともかく、リリースしてからでもある程度修正がきくWEBの世界では「そこまでする必要はない」という感覚が正直なところかと思います。

 

しかし。今回はそんなWEB業界のディレクターやデザイナーの方々に、あえて「誰にでもできる、インスタント・ユーザビリティテスト」の方法とその効用をご紹介します。

手順1:テストを設計する
手順2:当事者本人が2名以上でシミュレーションしてみる
手順3:関係者以外の無償で協力してくれる5人を集める
手順4:テストをする
手順5:結果を分析し、改善方法を検討する

手順1:テストを設計する

本来のテストでは1人の被験者に対して60分程度の時間で収まるように複数の課題や質問を設定して全体を設計しますが、インスタント版では長くても15分で収まる程度にします。

●長くても15分以内に納める

ものすごく短く思えるかもしれませんが、慣れていない人がテストをするとどうしても長くなりがちですし、これ以上長くなると被験者の行動を記録しきれなくなりますので、短めに設定しておきます。


  • オープンニング:5分:被験者へテストの説明をする


  • テスト    :5分:被験者が実際に操作をする


  • クロージング :5分:操作の振り返り、操作を行っての感想などを被験者に聞く

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●調べたい項目は極力絞る

設定する課題(調べたいこと)は欲張らずに1個だけにしましょう。 また、問題がない部分は被験者に対して指示を出して素早く通り過ぎるなど、課題部分のみにフォーカスできるように設計します。


  • 一連の動作確認の場合・・・・・・・・1個
     「このサイトで本日の目玉商品から好きな物を買物する」
     「トップページで遺産相続についての説明を読み、無料の資料をダウンロードする」


  • ごく短い動き・・・・・・・・2個ほど
     「ログインボタンを探してクリックする」
     「レシピを選んで印刷する」

手順2:当事者本人が2名以上でシミュレーションする

テスト内容を記録したい場合、1名では難しいので、もう1名記録者を準備します。 記録者になる人は、テスト対象について自分と同等に詳しく知っている人がベストです。もちろん、被験者への質問内容なども把握しておきます。

●被験者に対する説明・質問は台本に記す

テストの大枠ができたら、オープニングの説明の台詞、クロージングの質問事項を作成します。ユーザビリティテストは複数人の被験者に対して行いますので、操作環境を同じ条件にするために、最初の説明も最後の質問も同じになるように台本(メモで十分)を用意します。

●記録用紙を作る

テストでチェックをしたい項目を書き出し、それらをクリアしたかどうか、できなかった理由(ユーザーの行動や発話)を記録する用紙を作成します。 クリアしたかどうかの基準は以下のように設定します。


  • スムーズにできた


  • 迷ったり後戻りしたりしたが、できた


  • 一つの操作をするのに1分以上迷った/できなかった/勘違いをした

●自分でシミュレーションしてみる

最初に、自分が被験者役、試験者役の二役になり、通しでやってみます。 もちろん正しい道筋を知っているのでサクサク終わるでしょうが、このシミュレーション段階で全体が15分かつかつの場合は、全体を短くする必要があります。


  • ご挨拶「本日はご協力ありがとうございます。よろしくお願いします。」


  • テストの説明(台本をちら見しながら相手に語りかけるように実際に声に出す)


  • 操作(自分で実際にやる)


  • 操作の振り返り、質疑応答(質問項目を読み上げ、自分で声に出して答える)


  • ご挨拶「本日はありがとうございました」

●記録者を被験者役にしてシミュレーションする

自分は試験者役、記録者を被験者役にしてシミュレーションをします。このときも時間を計りながら行い、調整します。

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手順3:関係者以外で無償協力してくれる5人を集める

テスト作りと平行して、被験者集め(リクルーティング)をします。

被験者は実際のコアターゲットと同じ属性の人を5名集めます。
(※なぜ5名なのかは、こちらを参照ください)

というのは理想で、実際は同じ属性の人を集めるのは難しいものです。そんな場合は以下の条件を満たす人をなるべく探してください。
本来はテストに協力してくれた人には謝礼を支払いますが、インスタント版の場合は、無償で協力してくれる人(知人・友人など)を探します。

●被験者は極力、ターゲットに近い属性にする


    • テスト対象のインターフェースや仕様を知らない人
      または見たことがある程度で使ったことがない人)
      社内の人は最も声をかけやすい人たちですが、仕様を知っている人がテストを受けても
      意味がありません。違う部署の人に依頼するなど工夫をしてください。

    • 中高年がコアターゲットの場合は、ジャストな人を1~2名含む
      50代以降は視力や動作・理解力などが、人によってばらつきが出始めます。
      そのため、なるべくターゲットに近い人を1名でも含むのが望ましいです。

    • 性別は少なくとも3名以上合わせる
      ご存知のように、女性と男性の思考パターンはまったく違いますので、出来る限
      り性別は合わせるようにしてください。

  • ITリテラシーをなるべく合わせる
    仕事柄、PCもタブレットもiPhoneもAndroidも使うWEB関係者とは違い、普通
    の人が頻繁に使うデバイスは1つないしは多くて2つです。
    ITリテラシーが高すぎる人は少々説明が足りなくても、直感的に操作性を獲得
    してしまうことが多いため、一般的な被験者の代わりにはなりにくいと考えてく
    ださい。WEB制作会社の人が社内の人を使ってユーザビリティテストを行う場合は、
    特に注意が必要です。

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●こちらで決めた日時・場所に来てもらうアポを取る

試験会場は、試験者の指定する場所に来てもらうこととします。
また、試験の日時もなるべくまとめて行う方が効率的ですが、相手の都合もあるので、可能であるなら、2日間に分けてもよいでしょう。
テストとテストの間は少し余裕をもって空けておきましょう。

手順4:テストをする

いよいよ本番です。


    • テストに集中できる静かな場所を用意する
      テストは被験者がテストに集中できるように、なるべく静かな場所を選びます。

  • 録画の準備をする
    また、テストの様子を録画するのであれば、三脚付きのビデオカメラを2台用意し、
    1つは操作画面を、1つは被験者の顔と手元を撮影します。
    (iPhoneがあればそれで十分です。)
    (三脚がない場合は、撮影係り2名を追加し、手持ちで撮影します。)

    目的が達成できたか否かだけを知りたいのであれば録画は不要ですが、なぜ達成でき
    なかったかを追求するには、被験者の動きを正確に知る必要があります。
    画面上の操作は非常に早く、極端な話、試験者が瞬きをしている間に操作が進んでいる
    場合がありますので、振り返りには動画が有効なのです。


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●試験者は被験者の様子を観察し、記録する

試験者は被験者への説明をした後、被験者が操作するのを観察し、チェック項目をチェックし、その行動と発話を記録します。すべてを記録するのは難しいので、
被験者がどんな行動をとったかと、なぜその行動をとったかを
把握することに注力し、ポイントとなる部分のみメモをします。

●記録係りは被験者の行動と発話をつぶさに記録する

記録係は記録に徹し、
被験者の行動(ボタンを押しながら首をしきりに傾げる、など)、
課題ができなかった理由(ボタンでない枠を3回押した後、どうすればよいのかわからずに前の画面に戻った、など)、
発話(あれ、おかしいな、などのつぶやき含む)
などを記録します。

●試験者は淡々とテストを進める

テストが始まると、想定外のことが次々に起こります。
試験結果もさることながら、被験者が「テストされている」ことや「撮られていること」に対して極度に緊張しすぎて頭が真っ白になる場合もあります。
そんな場合も試験者は落ち着いて。いったんテストを中断し、被験者に話しかけて緊張を解き、最後までテストを行うことを目指します。
また、被験者が導き出すべき解答を質問してくる場合もあります。そんなときは「どうなんでしょうね」などと曖昧な相槌を打って、拒絶もせず回答もせずに切り抜けます。

●振り返りで行動の理由や気分(感情)を尋ねる

操作をすべて終わったら、被験者をねぎらい、まず、感想を聞きます。
「お疲れさまです。いかがでしたか?」
その際試験者は「難しかったですか?」「わかりやすかったですか?」などと、被験者の感想を誘導しないように質問することが大切です。 

その後、観察していて、なぜそのように行動したかといった理由や、試験者が見逃した動きなどについて確認します。

●記録のすり合わせをする

被験者を帰したあと、すぐに試験者と記録者で結果のすり合わせをします。
二人の意見が分かれるところは、後ほど録画で確認します。
すぐにすり合わせをするのは、複数人同じテストを繰り返す内に記憶が混濁してくるためです。

●次のテストの準備をする

すり合わせが終わったら、次の試験の準備をします。
使用するデバイスをデフォルトにするなど、同じ条件でテストができるように準備します。
こうした準備のための時間と、テスト中はかなり集中しているため、頭をリフレッシュさせるためにも、被験者と被験者の間は20分ほど余裕をもってあけておくことをお勧めします。

手順5:結果を分析し、改善方法を検討する

5名のテストが終わったら、結果を分析し、改善への動きを取ります。

●テスト結果を、可能な範囲で着地させる

テストで得た結果は、なるべく早く関係者で協議をします。
制作のタイミングや予算、残された時間などにもよりますが、ユーザーがひっかかった不具合に対しては、致命的なものは改善する、そうでないものは、次回バージョンアップの際に改善する、次の開発の際に役立てるなど、処置を決めます。
本来のユーザビリティテストの場合、テスト結果と分析結果が報告書にまとめられますが、インスタントバージョンの場合は、メモを片手に口頭で話合うで十分かと思います。
ともかく、出た結果を黙殺(なかったことにする)しないことを心がけます。

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最後に

いかがでしたでしょうか。インスタントといいながら、結構、めんどくさい説明になってしまいましたね。
しかし、この中から、できることだけをチョイスしてもらえれば大丈夫です。

ユーザーというのは製作者が思ってもいないところで誤解をしたり、意外な行動をしたり、操作の途中で怒ったり困ったり、果ては操作を投げ出したりするものです。
それを実際に目にすることは、ユーザビリティに関するどんな偉い人の講義を聞くより、インパクトがあります。
モノ創りに携わる人は、この経験を一度はすることをおすすめします。そうすることで「誰のためのモノ創りか」という原点が心に根付くからです。

ECサイトのボタン一つを、ユーザーが直感的に嫌がるものから、クリックするのにためらわないものに改善しただけで、300億円売上げが伸びたという話は有名ですが、使い勝手の中には、こうしたユーザーの心理が多分に含まれています。
※300億のボタン
そして、こうしたユーザーの嫌悪感や好感や感情や思考などは、決して分析ツールからはわからないということです。

いままでユーザビリティテストに縁のなかった人も、機会があれば、インスタント版ユーザビリティテストをぜひやってみてください。